大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜地方裁判所 昭和62年(行ウ)7号 判決 1988年11月16日

原告

有吉克子

原告

石田賢治

原告

渡名喜重雄

原告

脇裕子

原告ら訴訟代理人弁護士

木村和夫

林良二

飯田伸一

中村宏

久保博道

西山宏

被告

横浜市建築主事

南利幸

右訴訟代理人弁護士

綿引幹男

被告

横浜市建築審査会

右代表者会長

大曽根銈一

右訴訟代理人弁護士

横山秀雄

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の申立て

一  原告(請求の趣旨)

1  被告横浜市建築主事が訴外川鉄商事株式会社に対し、別紙物件目録記載の建築物について、昭和六一年一二月一二日付けをもってした建築確認処分を取り消す。

2  被告横浜市建築審査会が原告らに対し、前項記載の建築確認処分について昭和六二年三月一七日付けをもってした裁決を取り消す。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

以上のとおりの判決を求める。

二  被告横浜市建築主事

1  本案前の申立て

(一) 原告らの被告横浜市建築主事に対する訴えを却下する。

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

以上の判決を求める。

2  本案の申立て

主文と同旨の判決を求める。

三  被告横浜市建築審査会の申立て

主文と同旨の判決を求める。

第二  当事者の主張

一  当事者適格

1  原告らは、別紙物件目録記載の建築中建物(以下「本件建築物」という。)の敷地(以下「本件敷地」という。)の北西側に、東横線及びこれに並行して走っている二本の公道を挟んで隣接している地域に宅地及び居宅を所有して居住している者である。

2  本件建築物が建築されることによって、原告ら居住の建物について、冬至において二時間以上にわたり日照が遮られるほか、深刻な電波障害、ビル風等の被害を生じる蓋然性が高く、被告横浜市建築主事(以下「被告建築主事」という。)の、訴外川鉄商事株式会社(以下「訴外会社」という。)に対する昭和六一年一二月一二日付け建築確認処分(以下「本件処分」という。)によって原告らが保健衛生上不断の悪影響を受けることになるから、原告らは本件処分の取消を求める本件訴訟につき原告適格を有する。

3  横浜市が策定した日照等指導要綱(以下「市指導要綱」という。)によると、冬至における午前九時から午後三時までの間において住居の一以上の居室の開口部に三時間の日照があれば日照被害がないとの基準を示しているところ、このような基準によって原告らに生じる日照被害を測定してみると、原告有吉の居宅については午前九時から同一一時一五分まで、原告石田の居宅については同九時から同一〇時三五分まで、同渡名喜の居宅については同九時から同一一時一五分まで、原告脇の居宅については同九時から同一〇時四〇分までそれぞれ日照の被害を生じ、日中午前中はほぼ日が当たらない結果を生じることになる。そして、本件建築物は堅固な建物であるから、建築後数十年にわたって存在し続けることになり、原告らの日照被害は本件建築物が存在する限り継続し、住環境において最も重要で基本的な太陽の恵みを奪われることになる。

その他にも、原告らの居宅には、本件建築物の建築工事の進行に伴って既に相当程度の電波障害が生じてきており、また、本件建築物周辺の高層建物は七階程度のものが数棟あるに過ぎないにもかかわらず、本件建築物が一四階建で既に一〇階程度まで骨組みが完了しているために圧迫感、眺望などの被害を生じており、さらに本件建築物が存在することによって東横線を通過する電車の通過音も以前より騒がしくなったうえ、プライバシー侵害のおそれも生じているのである。

以上のとおり、原告らは本件処分により建築される本件建築物によって、日照等の被害を被ることになるのであるから、本件処分の取消訴訟について原告適格を有する。

二  請求の原因

1  行政処分及び裁決

(一) 訴外会社は本件建築物の建築を計画したが、本件建築物が建築基準法所定の容積率の制限を超え、また、本件敷地が都市計画法により最高限第四種の高度地区に指定された地域にあって、二〇メートル以上の建物が建てられないことになっていたため、昭和六一年一〇月九日付けで横浜市長から、建築基準法所定の容積率を超える建物を建てる許可、及び横浜市都市計画高度地区規定書(但し、横浜市告示第二五八号による変更後のもの、以下「本件規定書」という。)に基づく高さ制限適用除外の許可(以下「本件先行処分」という。)を受けた。

(二) 訴外会社が本件先行処分に基づいて本件建築物の建築確認申請を行ったところ、被告建築主事は右申請に対して昭和六一年一二月一二日付けで本件処分を行った。

(三) 原告らは本件処分に不服であったため、建築基準法に基づいて被告横浜市建築審査会(以下「被告審査会」という。)に対して本件処分の取消を求める審査請求を行ったが、同被告は昭和六二年三月一七日付けで審査請求を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をした。

2  本件処分の違法性

(一) 建築基準法五八条は、高度地区内の建築物の高さは、高度地区に関する都市計画に定められた制限に適合しなければならない旨規定しており、本件敷地は最高限第四種の高度地区であるから、建築物の高さは最高二〇メートルに制限されている。

訴外会社は、本件敷地に本件建築物を建築するため、横浜市長に本件先行処分の申請を行い、これを受けて本件建築物の建築を適法とする本件処分を受けた。

(二) 本件先行処分は、建築物の高さ制限を緩和するものであるが、何ら法的根拠のないもので違法であり、その瑕疵は重大、明白であるから無効である(以下、単に「違法かつ無効である」という。)。

即ち、横浜市の都市計画である横浜国際港都建設計画には、最高限度高度地区を定めるほかその適用除外の要件を定める規定(以下「本件適用除外規定」という。)を設けており、その内容を記載した本件規定書には、適用除外の要件として「市長が市街地環境の整備向上に寄与すると認め、かつ、建築審査会の同意を得て許可した建築物」又は「市長が公益上やむを得ない、又は周囲の状況等により都市計画上支障がないと認め、かつ、建築審査会の同意を得て許可して建築物」については高度地区の制限を適用しない旨規定している。

しかし、本件適用除外規定は、法律上の制度を改廃するものであるから法律上の根拠を要するところ、次のとおり、法律上の根拠規定がなく、無効なものである。

(1) 建築基準法は、高度地区を定めた都市計画による高さ制限を適用除外又は緩和する規定を設けておらず、本件適用除外規定には法的根拠がない。

即ち、建築基準法は、建築物の高さ制限に関する規則として、建築物の容積率による高さ制限(同法五二条一、二項)、第一種住居専用地域内における絶対高さ制限(同法五五条一項)、道路斜線、隣地斜線、北側斜線による高さ制限(同法五六条一項)及び日影による高さ制限(五六条の二第一項)の各制限(以下これらの制限を一括して「容積率等による制限」という。)を設けているが、右制限は、道路斜線、隣地斜線、北側斜線による高さ制限を除き、特定行政庁が一定の要件のもとに建築審査会の同意を得て緩和することができるものである(同法五二条三ないし五項、五五条二、三項、五六条の二第一項但書)。

ところが、高度地区を定めた都市計画による建築物の高さ制限(建築基準法五八条)については、建築基準法上、特定街区に関する適用除外規定(同法六〇条三項)がある以外にその適用除外ないし緩和を根拠付ける規定が存在せず、却って、同法八六条一項において、特定行政庁が緩和することのできる他の諸規制と異なる扱いさえ受けている。

以上のとおりであって、建築基準法は、高度地区を定めた都市計画による建築物の高さ制限を絶対的なものとし、その適用除外又は緩和を許容していないと解すべきである。

(2) 都市計画法は、都市計画によって指定した高度地区内の特定の敷地について建物の高さ制限を解除することを認めていない。

即ち、都市計画法は、都市計画により用途地区内における建物の高さの最高限度又は最低限度を指定した高度地区の定めができる旨を規定しているが、指定した高度地区内の特定の敷地について、建物の高さ制限を解除しうる権限については定めをおいておらず、右制限の解除を認めていないから、本件適用除外規定は都市計画法一五条一項二号、八条一項三号、同条二項二号ニ、九条一〇項に違反する無効な規定である

(3) 本件適用除外規定は建築基準法五八条に反する。

即ち、本件適用除外規定は、特定の建物のために高度地区の規制を撤廃して容積率等による制限と同様な規制に服せしめ、建築基準法の適用除外ないし緩和の法的根拠(同法五二条三ないし五項、五五条二、三項、五六条の二第一項但書参照)を得ようとするために設けられたものであるが、右(2)のとおり、都市計画によって定められた高度地区の建築物の絶対高さ制限を建築基準法上の建築物の容積率等による高さ制限等と同様に扱うことを許容した規定は都市計画法には存在しない。

また、都市計画法と建築基準法とは、都市計画法が法律要件を、建築基準法がその法律効果たる制限、適用除外、緩和について規定している関係にあり、都市計画法の建築制限は建築基準法の制限よりも一層厳しいか、都市計画の有する目的的な観点からする例外的もしくは限定的な規制であるところ、都市計画法には高度地区内の建築制限に関する明文の規定がなく、一切を建築基準法に一任していると解されるから、都市計画法及び建築基準法を通じて都市計画における高度地区の定めに基づく制限が唯一絶対的である。そして、前記(1)のとおり、高度地区を定めた都市計画による高さ制限(建築基準法五八条)を緩和する建築基準法上の根拠規定はないのであるから、本件適用除外規定は建築基準法五八条に反する。

以上のとおり、本件適用除外規定は、法的根拠を欠くばかりでなく、建築基準法五八条に反するものである。

(4) 本件適用除外規定は都市計画法の定める明確性の原則に反する。

即ち、都市計画は、都市における土地利用に関する計画であり、土地に関する権利者に対し直接土地利用上の制限が課される(規範性)から、都市計画の内容は明確でなければならない。都市計画における高度地区の定めは、建物の高さの最高限度を定めたもので土地に関する権利者に制限を加えるものであるから、規範性を有し明確でなければならない(都市計画法一四条二項、八条二項二号ニ)ところ、本件適用除外規定は、都市計画に定められた一般的な最高限度と異なる高度規制を特定の敷地について個別に行うものであって、いかなる部分に適用されるのかが予め明らかにされていないのであるから、都市計画法の要求する明確性の原則に反する。

以上のとおりであるから、本件適用除外規定は、法的根拠がないばかりでなく、都市計画法の定める明確性の原則にも反する。

(5) 本件適用除外規定は都市計画法二一条に違反する。

即ち、本件適用除外規定は、高度地区内の特定敷地から高度地区による制限を撤廃することを規定しているのであるが、それは、当該敷地における高度地区の否定という都市計画の廃止と同一の効果を有するものであるから、本来都市計画を廃止する権限の規定に基づかなければ有効になし得ないものである。仮にこれが都市計画の変更とみうるにしても、都市計画の変更には「客観的な変更の明らかな必要性」と「市長の許可及び建築審査会の同意」を要件とするのであるところ、これの要件、手続を満たしていない本件適用除外規定は都市計画変更手続に反し、都市計画法二一条所定の関係住民の権利を奪うもので、同条項に違反する。

以上のとおりであるから、本件適用除外規定は法的根拠がないばかりでなく、都市計画法二一条に反して無効である。

(6) 本件行政処分は、特別処置にとどまらず、これと類例が多発する原因ともなるものであり、都市計画法九条における高度地区の制度を無効たらしめるもので、同法に反するから、その点においても違法かつ無効である。

(7) 以上のとおり、本件適用除外規定は、法律上の根拠に基づかないものといわざるを得ず、これを適用してした行政処分のすべてが違法かつ無効というべきであるから、本件先行処分も違法かつ無効である。

(三) 仮に本件適用除外規定が有効であるとしても、横浜市長は同規定を濫用して本件先行処分を行ったものであるから、同処分は違法かつ無効である。

即ち、横浜市市街地環境設計制度(以下「環境設計制度」という。)の日照に関する規定は、市の指導要綱に過ぎないから、この規定によっては本件適用除外規定適用の裁量権が拘束されることはないとの見解に基づき、右日照に関する規定を本件先行処分において適用しなかった。しかし、環境設計制度の日照規定は、法規としての性質如何に拘らず、日照について第三者の利益を保護する重要な準則であるから尊重すべきものであって、横浜市長の裁量によって適用の有無を決しうるものではない。横浜市長は、本件建物が客観的に環境設計制度の日照規定を充足していないにも拘らず、右日照規定を排除して本件適用除外規定を適用し、本件先行処分を行ったもので、本件先行処分は、横浜市長がその権限を濫用してなしたもので、都市計画法に違反し、違法かつ無効な処分である。

(四) 横浜市長は、次のとおり違法な行政指導を行った上で本件先行処分をしたものであるから、本件先行処分は違法かつ無効である。

横浜市長は本件先行処分を行うについて、本件建築物の建築主に対し、市指導要綱による同意を得ることが不可欠である旨指導しながら、要同意対象者を含む利害関係人に対して同意権があることを告知すべき義務に反してこれを行わず、その結果、右同意権者らの同意権の完全な行使を妨げた。

また、横浜市長は、訴外会社の当初計画のもとで要同意対象者全員の同意を得られないことが明らかになったところ、訴外会社と結託し、本件建築物の計画を変更して高さを削ることにより、同意の得られなかった者を要同意対象者から排除することとし、もって市指導要綱による要同意対象者の同意の要件を充足させて本件先行処分を行った。

以上のように、横浜市長の行った行政指導は、訴外会社との癒着をも疑わせる違法なものであり、この瑕疵は、本件先行処分を違法かつ無効ならしめるものである。

(五) 以上のとおり、本件先行処分は法律上の根拠を欠くばかりでなく、本件適用除外規定を濫用してなされ、さらには、違法な行政指導に基づくものであるから、いずれの点においても違法かつ無効であって、右違法を承継した本件処分も違法かつ無効である。

3  本件裁決の違法

本件裁決は相当な理由の附記がなく、行政不服審査法四一条一項に反し違法である。

即ち、原告らは被告審査会に対し、本件先行処分が法律上の根拠を有しない違法かつ無効な処分であることを理由としてその審査請求を行い、審査請求書の記載及び口頭審理期日における陳述において、関連する法律条項について漏れなく解釈、意見を論述し、横浜市及び本件被告らの行った手続の進行と原告らを含む周辺住民に対する対応の不当、違法なことを明らかにして主張した。

ところが、本件裁決は、本件処分に至る形式的な事実経過を羅列しただけで本件先行処分を適法、有効なものとしているに過ぎず、原告らの審査請求の理由に対する答えをしていないばかりでなく、適法、有効とする具体的根拠を示していないのであって、審査請求を棄却した理由が不明である。

よって、本件処分及び本件裁決の取消を求める。

三  被告建築主事の本案前の主張

原告らは、本件建築物により日照被害、電波障害、風害等の被害を受ける旨主張しているが、本件建築物と原告らの居住地との間には広い公道等を間において相当の距離があるから右被害を受けるとは認められず、仮に、日照等に影響があるとしても、日常生活上我慢すべき受忍限度内の影響に過ぎず、原告らには本件処分の取消を求める法律上の利益がない。

即ち、横浜市は、良好な生活環境及び都市環境の実現のための指針並びに日照問題等の効果的解決方法として市指導要綱を制定して行政指導を行っているところ、本件建築物は市指導要綱の適用対象建築物に該当するので、横浜市は市指導要綱の定めるところに従って、本件建築物によって生じる日照障害が冬至における午前九時から午後三時までに住居の一以上の開口部に三時間以上の日照時間を確保するよう指導した。

ところで、本件建築物が建てられても、原告有吉、同石田及び同脇の各住居は冬至において午前一一時以降日照が確保され、また、原告渡名喜の住居では冬至において午前一一時を少し過ぎてからは日照が確保され、それぞれ午後三時までの間に約四時間の日照時間を確保できることになっている。

したがって、原告らには受忍限度を超える被害がなく、本件訴訟の原告適格を欠くものである。

四  本案前の主張に対する原告らの反論

1  受忍限度論は、公害、環境問題において適用される理論ではなく、かつ、行政訴訟において原告適格を判断するにおいて適用する余地がない。

即ち、公害被害においては、一般の不法行為の場合のように被害者、加害者に地位の互換性がないから、地位の対等という仮説的関係での利益考量論が実質的な平等理論として作用せず、また、企業活動に伴う侵害行為については、受忍限度論を適用することによって、却って第三者に対する侵害を前提とした利潤追求を容認することになる。これらの点に照らすと、公害、環境被害にあっては、同質の社会生活上の利益考量としての受忍限度とは異なり、他の要素を受忍限度の比較考量の要素に入れざるを得ないところ、その基準の定立は困難であるから、受忍限度論の法理を適用することはできない。

また、受忍限度論は、私的当事者間の公平を図る原理であり、行政訴訟の適格を判断するについて適用がない。

2  仮に受忍限度論が適用される余地があるとしても、民事訴訟法における損害賠償請求や差止請求と同様の基準で適用されるべきではなく、保護される利益又は保護が期待される利益の存否という基準から判断されるべきであるところ、原告らは既に原告適格の主張において主張したとおり、本件建築物の建築により被害を受けるのであって、受忍限度論に従うとしても、原告らは原告適格を有するものである。原告らの居住地が、本件建築物と東横線の電車軌道等を間においているからといって、右損害が生じることに変わりはない。

五  請求の原因に対する認否

1  被告ら

請求の原因1(一)、(二)の事実は認める。

2  被告建築主事

請求の原因2(一)の事実は認める。(二)ないし(五)は争う。

3  被告審査会

請求の原因1(三)、2(一)の事実は認める。同(二)ないし(五)は争う。同3の事実は否認する。

六  被告建築主事の主張

1  本件先行処分は公定力を有するものであるところ、原告らは、本件先行処分がなされたことを昭和六〇年一〇月一一日に知り、横浜市長に対して同月一三日に異議申立てをし、昭和六一年一二月一日付けをもって申立てを棄却されたが、本件先行処分の取消訴訟を提起しなかったため同処分は確定した。

その結果、本件先行処分は適法な処分として確定しているのであって、本件先行処分の違法を主張して本件処分の取消を求めることはできない。

2  建築基準法五八条は、高度地区内における建築物の高さは、高度地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければならない旨規定し、横浜市においてはその内容が本件規定書に定められている。

右内容は、最高限第四種高度地区内の建築物の高さ制限として二〇メートルを超えてはならないと定められており、その三号によれば、「市長が市街地環境整備向上に寄与すると認め、かつ、建築審査会の同意を得て許可した建築物」は適用除外される旨規定している。

訴外会社は、昭和六一年五月一七日右適用除外を受けるために横浜市長に許可申請を行ったところ、同市長は、本件規定書三号の要件を充足するものと認め、同年七月一五日建築審査会の同意を得て、同年一〇月九日付けで本件先行処分を行った。

したがって、本件先行処分は適法である、本件先行処分の違法、無効を理由として本件処分の取消を求める原告の主張は失当である。

七  被告建築主事の主張に対する原告らの認否、反論

被告建築主事の主張1の事実中、原告らが本件先行処分に関して横浜市長に対し同年一〇月一三日に異議を申立て、昭和六一年一二月一日付けをもって同申立てを棄却されたが、本件先行処分について取消訴訟を提起しなかったことは認めるが、その余は争う。

なお、本件先行処分は事件の成熟性を欠き抗告訴訟の対象とはなり得なかったものであるから、本件処分の取消訴訟において、本件先行処分の瑕疵を主張することに支障はないものである。

同2は争う。

八  被告審査会の主張

建築基準法五八条は、高度地区において、建築物の高さを高度地区に関する都市計画に定められた内容に適合するものでなければならない旨規定しているところ、横浜市においては、都市計画法八条、一五条、一九条に基づいて、都市計画の一貫として、神奈川県都市計画地方審議会の審議を経て神奈川県知事の承認を受けた本件規定書があり、そこに本件適用除外規定を設けているのであるから、本件先行処分の法的根拠は存在する。

以上のとおりであるから、本件適用除外規定は法律上の根拠を欠く旨の原告らの主張は理由がない。

本件裁決は、本件適用除外規定が都市計画法八条一項三号、同条二項二号ニ、一五条に基づく本件規定書により設けられていることを理由にして棄却したのであるから、理由を附した裁決であって、原告主張のような違法はない。

九  被告建築審査会の主張に対する原告らの認否

主張はすべて争う。

第三  証拠の提出、援用及び認否<省略>

理由

一原告適格について

1  まず、本件建築物が原告らに及ぼす影響について検討する。

(一)  原告らが本件建築物の北西側に東横線及びこれに並行して走る二本の公道を挟んで隣接する地域に宅地及び居宅を所有して居住していること、本件敷地は都市計画による最高限第四種高度地区にあり、二〇メートルを超えて建物を建てられないこと、横浜市長が昭和六一年一〇月九日訴外会社の申請に基づき、本件敷地に建築基準法所定の容積率を超える建物を建てる許可申請及び本件先行処分を行ったこと、被告建築主事が本件処分を行ったことの各事実は当事者間に争いがない。

(二)  <証拠>によれば、以下の事実が認められる。

(1) 建築基準法五六条の二第一項は、日影による中高層建築物の高さ制限を地方公共団体の定める条例に委ねているところ、横浜市においては、右趣旨の条例を制定しておらず、市指導要綱(乙第四号証。)を定めて、これに基づく行政指導等によって事実上の建築規制を図っている。

市指導要綱は、準工業地域における高さ一五メートル以上又は六階建て以上の建築物を適用の対象とし、本件建築物もその対象となるところ、同要綱は、住居地域における住居の一以上の居室の開口部について確保すべき日照時間を、冬至において午前九時から午後三時までの間で三時間とする旨定めている。

(2) 本件敷地は、東京急行東横線日吉駅から約一キロメートルのところにあって、幅員一三メートルの綱島街道(公道)に、164.01メートルにわたって接する土地であるが、準工業地域及び準防火地域に属し(建築基準法二一条、都市計画法八条一項一号、五号)、また都市計画法において最高限第四種高度地区と指定された地域(二〇メートル以上の建物が建てられない。)内にあり、建ぺい率が七〇パーセント、容積率が二〇〇パーセントに制限されている。

訴外会社は、1万460.74平方メートルの本件敷地に別紙図面表示のとおり、建築面積3260.33平方メートル、建築延面積2万3938.68平方メートル、最高の高さ四九メートル、本件建築物の高さ41.4メートル、建ぺい率31.17パーセント、容積率228.84パーセントの鉄骨鉄筋コンクリート造地上一四階、地下一階の本件建築物及び一〇八台駐車可能な駐車場を建設し、二五三戸の共同住宅、店舗、運動施設とすることを計画したが、その後横浜市長との間で市指導要綱に基づく事前手続を行い、本件敷地の付近住民に対する日照被害を緩和する趣旨から、一部計画を変更し、本件建築物の最高の高さを41.4メートルとした。

そこで訴外会社は昭和六一年五月一七日横浜市長に対し、建築基準法五九条の二に基づいて本件敷地の容積率の制限を200パーセントから228.84パーセントに緩和すること及び本件適用除外規定に基づき建築物の高さ制限の二〇メートルを緩和して41.4メートルにすることの許可申請を行って(甲第二号証)、同年一〇月九日その許可を得たうえ、本件建築物の新築工事につき確認申請を行って(甲第三号証)、同年一二月一二日被告建築主事からその確認を得た。

(3) 原告らの居住地は本件敷地との間に、東京急行東横線線路及びこれと並行して走る二本の公道を挟んだ住居地域(建築基準法二条二一号、都市計画法八条一項一号)にあり、付近には五階建ての建物が点在する程度で高層の建築物はなく、殆どの建物が平屋又は二階建てであり、また、東横線の東側(本件敷地の所在する地域)にも七階建ての建物が相当数存在するだけである。

本件建物の原告ら居宅に最も近接している部分(本件建物の北西端)から原告渡名喜の居宅までの距離は43.75メートルであり、原告らの居宅は、本件建物の完成により、住居の一以上の居室の開口部について、冬至において、午前一一時ころまでの日照が妨げられることになるが、それ以上の日影を生じることはない。

以上のように認められる。原告渡名喜本人尋問の結果中には、原告渡名喜の居宅には本件建築物の建築工事が一〇階部分まで進行した昭和六二年一二月冬至において、午前一一時四〇分ころまで日が当たらなくなり、原告有吉の居宅ではさらにひどい状態である旨の供述があるが、右供述は前掲乙第五号証(日影図)に反し、かつ、供述内容の正確性に疑問があって採用し難いところであり、他に右認定に反する証拠はない。

2 ところで、行政事件訴訟法九条は、「取消を求めるにつき法律上の利益を有する者」が取消訴訟の原告適格を有する旨規定しているところ、右「法律上の利益」とは、行政法規が私人等権利主体の個別、具体的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている利益をいうものと解される。

そして、建築基準法は、「国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。」(一条)と規定しているところから明かなとおり、一般的な生活環境の保全という公共利益の維持増進を目的としているものであるが、これにとどまらず、第一種住居専用地域内における建築物の絶対高さを制限し(同法五五条)、また、建築物の各部分の高さを制限し(斜線制限、同法五六条)、さらに、日影による高さ制限をしている(同法五六条の二)ところからすると、同法は日照、防災及び衛生といった近隣住民の個別、具体的な生活利益を保護しようとする趣旨であると解されるのであり、建築確認は申請にかかる建築物が建築基準法又は他の建築物に関する法令上の規制に適合するか否かを審査して公権的に確認する行政処分であると解される。本件建築物が建築されることにより、原告らについてさきに認定したような日照障害が生じるのであるところ、原告らはこの障害が生じることを前提として、本件建築物の近隣住民として建築確認処分の取消を求めているのであるから、建築基準法の保護の対象である日照等の個別、具体的利益が侵害され、又は侵害されるおそれのある者として、右確認行為の是正を求めるものであり、本件訴えは、行政事件訴訟法九条所定の法律上の利益が存在するものというべきである。

3  なお、被告建築主事は、原告らが本件建築物の建築により被る日照障害等の被害は、受忍限度を超えるものではないから本件訴えは不適法である旨主張する。

なるほど、生活利益の侵害があっても、その侵害について法律上の保護を求め得るには、おのずから限界があり、些細な侵害についてまですべて保護を求めて取消訴訟を提起しうるものでないことは被告主張のとおりである。しかし、その基準を、私法上の権利間の調整、権利行使の限界を設定する場合の受忍限度に求めることは相当でないし、行政庁の行政指導の基準にすぎない市指導要綱の定めに求める合理的理由もない。結局、侵害された又は侵害される生活利益の性質、程度、周囲の客観的状況等を総合的に判断して、それが法律上利益侵害というに値するものであるか否かによって決すべきものというべきである。そこで本件についてみるに、本件建築物の完成によって原告らに生じる生活利益の侵害については既に認定のとおり、冬至において午前一一時ころまでの日影を生じるというのであるから、生活利益の侵害といえないほどに些細なものということはできない(ただし、それが直ちに私法上の権利関係において、受忍限度を超えるものとして権利行使を差止め、損害賠償を請求しうることを意味するものではなく、その点については別に検討されなければならない。)というべきである。

したがって、本件訴えにつき原告らは原告適格を欠くものではないと認めるのが相当であり、被告建築主事の本案前の申立ては採用しない。

二本案の主張について

本件処分がなされたことは既に認定のとおりであるから、本件処分の違法事由について検討する。

1  原告らは本件先行処分が無効であるとしたうえで、無効な本件先行処分を前提としてなされた本件処分は違法である旨主張する。

そこで、本件先行処分の効力について検討する。

(一)  本件適用除外規定が法律上の根拠を有しない旨の主張(請求原因2(二)(1))について

都市計画法は、都市計画において高度地区の定めをすることができると規定し(同法八条一項三号)、市街地の環境維持の目的でなされる最高限度高度地区と、高度利用の目的でなされる最低限度高度地区の二種類の方法を規定(同法九条一〇項)し、高度地区の定めについて、建築物の高さの最高限度又は最低限度の定めを設けることを要求している(同法八条二項二号ニ)ほかには何ら具体的な定めをしておらず、また、建築基準法も、高度地区内の建築物の高さを高度地区に関する都市計画法の定めるところに適合するように要求している(同法五八条)のみで他に特段の規定を設けていないから、その具体的な規制の内容については、都市計画に委ねているものと解される。即ち、都市計画法は、都市計画の策定権者をして、地域の状況、今後の都市開発の見通し等を検討させたうえで、これに基づいて高度地区として指定する地域、建築物及び建築物の高さの最高限度又は最低限度を決定させる趣旨であると解される。

そして、前掲乙第一号証によれば、横浜市は、都市計画において高度地区を定め、本件規定書により最高限度高度地区を第一種から第五種まで定めて、それぞれについて建築物の高さの最高限度を規定していること、本件規定書は、最高限度地区における建築物の高さ制限を緩和する規定及び本件適用除外の規定を設けていること、本件適用除外規定は、「市長が市街地環境の整備向上に寄与すると認め、かつ、建築審査会の同意を得て許可した建築物」又は「市長が公益上やむを得ない、又は周囲の状況等により都市計画上支障がないと認め、かつ、建築審査会の同意を得て許可した建築物」であること等を要件として、最高限度高度地区の建築物の高さ制限を適用しないとしているのであり、横浜市においては、一定の地域を最高限度高度地区と指定して五種類の建築物の高さ制限を行ったうえ、さらに具体的な状況を審査して特定の敷地について高度地区の定めを適用除外又は制限緩和して、一律に高さ制限をすることによる不都合を是正することができるように都市計画を定めていると解される。

そうであるとすると、都市計画法は高度地区の定めを都市計画において規定できるものとして、その具体的内容及び指定地域を都市計画に委ねており、本件適用除外規定は、高度地区を具体的に指定する方法の一つとして設けられているものと解せられるから、本件適用除外規定の法的根拠は、都市計画法八条一項三号に求めることができるというべきである。

(二)  都市計画策定権者は、特定敷地について高さ制限の適用を除外する権限を有しない旨の主張(請求原因2(二)(2))について

都市計画法八条二項ニは、都市計画において高度地区を定めた場合、建築物の絶対高さにより規制する旨を規定しているに過ぎず、高度地区指定地域内において、周囲の状況、今後の市街地の開発状況等から、特定の敷地について、高度地区の規制を適用除外することを否定する趣旨ではなく、むしろ、都市計画に高度地区の指定を委ねた以上は、高度地区内における規制の適用除外規定についても都市計画に委ねていると解するのが相当であり、原告の右主張は採用できない。

(三)  本件適用除外規定は建築基準法五八条に反する旨の主張(請求原因2(二)(3))について

既に判示したとおり、都市計画法は高度地区内の建築物の高さ規制に関して、都市計画自体にその具体的内容を委ねており、建築基準法五八条は建築物の高さを都市計画の高度地区に関する規定に適合するように定めているに過ぎないものであって、原告らの主張はその前提において失当である。

(四)  本件適用除外規定が都市計画法の明確性の原則に反する旨の主張(請求原因2(二)(4))について

都市計画の内容が明確でなければならないことは主張のとおりであるが、本件適用除外規定が設けられている趣旨が前記判示のとおりであること、本件除外規定が単に市長の裁量のみに委ねられているのではなく、除外を認める場合の趣旨、目的を明示し、建築審査会の同意を要件としているところに照らすと、本件適用除外規定が明確性の原則に反するものということはできない。

また、高度地区内の高さ制限は、全地域画一でなければならない法律上の根拠は見出し難く、高さ制限の方法については都市計画法上に具体的な定めがなく、都市計画に委ねられているものと解すべきこと既に判示のとおりであるから、高さ制限が画一的であるべきであるのに本件適用除外規定はこれに反する旨の主張も理由がない。

(五)  本件適用除外規定が都市計画法二一条の手続に違反する旨の主張(請求原因2(二)(5))について

本件適用除外規定が、適法なものであることは既に判示したところであり、都市計画において、本件適用除外規定は高度地区指定の内容をなすもので、高度地区の指定を変更、廃止するものでないことはその規定の趣旨に照らして明らかなところであるから、右主張も理由がない。

(六)  本件適用除外規定が高度地区の制度を無効とするものである旨の主張(請求原因2(二)(6))について

その主張が理由がないことは、本件除外規定の趣旨、及びこれが適法とされる理由について既に判示したところによって明らかである。

(七)  その他本件適用除外規定を無効とすべき事由は見当たらないから、本件適用除外規定が無効であり、これに基づいてなされた本件先行処分が無効であるとして本件処分の無効を主張する原告らの主張はいずれも理由がないというのほかない。

2  本件先行処分が、本件適用除外規定の濫用、違法な行政指導に基づいてなされたもので違法である旨の主張(請求原因2(三)、(四))について

本件に現れた全証拠を検討しても、本件先行処分を行うについて本件適用除外規定の解釈、運用につき、処分を無効とすべき程の裁量権の濫用があったことを窺わせるに足りる事情は、何ら認めることができない。

また、違法な行政指導があったとする点については、主張の事実が存在するとしても、本件先行処分を無効とする程に重大明白な瑕疵とすることはできないばかりでなく、本件に現れた全証拠を検討しても主張の事実を認めるに至らない。

よって、主張の事実をもって本件先行処分が無効であり、本件処分が違法であるとの主張は採用できない。

また、原告らの右主張に、本件先行処分において、無効とするに至らないまでも、裁量、判断の誤りがあり、行政指導の点において処分を違法とする程の逸脱があった旨の主張が含まれているとすれば、右主張は許されないものである。

即ち、原告らが本件先行処分について、昭和六〇年一〇月一三日に異議の申立てを行い、昭和六一年一二月一日付けで同申立てを棄却されたにかかわらず、本件先行処分に対して訴訟上争う処置をとることなくこれを確定させたことは当事者間に争いがないところであり、本件先行処分が、特定の敷地に建築され、かつ、規模、構造等について具体的に特定されている建物を前提としてなされたものであることは、<証拠>により明らかなところである。

以上によると、本件先行処分は本件敷地に本件建築物の建築を可能にするもので、具体的な権利義務に影響を及ぼし、かつ、公定力を有する行政処分であるというべきところ(原告らが主張するように本件先行処分が成熟性を欠くとは考えられない。)、原告らはこれに対し取消訴訟を提起してその効力を争うことなく確定させているのであるから、本件において、本件先行処分の違法を主張することは許されない。

三本件裁決の違法(理由附記の不備)の主張について

1  昭和六二年三月一七日に本件裁決がなされたことは当事者間に争いがない。

2  <証拠>によると、原告らの被告審査会に対する審査請求において主張された理由の要旨は、①本件先行処分は法律上の根拠を欠き、かつ、都市計画法一五条一項二号、八条一項三号、同条二項二号ニ、九条一〇項、二一条、建築基準法五八条に反する、②横浜市長が本件適用除外規定を濫用し、かつ、違法な行政指導を行った上で本件先行処分をしたから、本件先行処分が違法であるというのであり、これに対する本件裁決における理由の附記は、主張①について、都市計画法は市町村に対して高度地区の定めをする都市計画策定権限を与えており、横浜市はこれに基づいて合理的な土地利用を実現するために都市計画の高度地区の定めに関する規定中に本件適用除外規定を設け、神奈川県都市計画地方審議会の議決を経て県知事の承認を得ていること、本件適用除外規定が恣意的な無制限な定めではないことを示してその適法であることを説示しており、②については、横浜市長が本件先行処分を行うに際し、訴外会社に対して、本件建築物により市指導要綱に定める日照時間を確保することができなくなる付近住民の同意を求めたことは、環境設計制度に反しないし、権限濫用にも当たらないこと、市指導要綱における日照基準上の同意要件は、要同意対象者に建築物の設計計画に対する拒否権を与えたものではないから、行政指導にも違法はない旨を説示していることが認められる。

3 審査請求に対する裁決に理由の附記を要求するのは、審査機関の判断を慎重に行わしめ、かつ、判断の公正を保障すると共に、無用な争訟の生じることを避けるために、判断の根拠を示すことを求めるにあるから、審査機関は到達した結論について、判断の根拠を、判断の当否を判断できる程度に記載するを要し、それをもって足りるものと解すべきところ、この点から審査請求において原告らが主張した右争点と、被告審査会が附記した右説示を対比すると、その理由附記には何ら欠けるところはないというべきである。

原告らの主張するところは、原告らは審査請求書の記載及び口頭審理期日において、本件先行処分の根拠としてあげられそうな法条をとりあげて、それが処分の根拠となり得ない理由を詳細に指摘したにもかかわらず、裁決にはこれに答えるところがないというのであるが、主張された法律上の見解について逐一判断を示めすことを要するものではないから原告らの主張は理由がない。

また、原告らは被告らの一連の手続の進行及び原告らを含む周辺住民に対する対応の不当性、違法性を指摘して、本件先行処分が本件適用除外規定の濫用、違法な行政指導に基づいてなされた旨を主張したにもかかわらず、この点に関する理由附記がない旨主張するが、この点についても、前記認定の理由附記をもって欠けるところはないというべきである。

4  他に、本件裁決を違法とすべき事由は見当たらないから、本件裁決を取り消すべき理由はない。

四以上のとおりであるから、原告らの被告らに対する請求はいずれも理由がないものとして棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官川上正俊 裁判官宮岡章 裁判官西田育代司)

別紙物件目録

一 敷地の位置等

1 所在  横浜市港北区箕輪街六三五番地

2 用途地域  準工業地域

3 防火地域  準防火

4 都市計画法の制限  第四種高度地区

二 敷地面積  1万460.74平方メートル

三 建物の建築面積  3260.33平方メートル

四 建物の伸べ面積  2万3938.68平方メートル

五 建築物の用途・構造  鉄筋コンクリート造共同住宅兼店舗

六 建物の階数・高さ  一四階、41.40メートル

別紙図面<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例